「ここですね。火の神に呪われているという場所は。」
僕は辺りを見渡して息を呑んだ。
僕たち5人は、最近やたらと有名になっている、心霊スポットに来ていた。
その心霊スポットとは、現在も未だに使われているキャンプ場なのです。キャンプ場といってもテントとかを使うキャンプではなくてコテージで宿泊するものだったりします。
そして、僕たちは今そのコテージに泊まっているんです。
「はぁー・・・呪われてるわりには何も起きないね。」
可奈子さんが明らかに退屈そうに溜息をついた。
「呪いとか心霊とかいうんだ、そういうのは夜じゃないか?」
龍魔さんが無表情に言い放つ。
僕は何も起きないのが一番だと思うんですがね。
「じゃあさぁー、夜まで遊びに行こぉ。」
可奈子さんはそれが目的できている可能性もありそうです。
「俺は寝るからパス。」
「俺はちょっと読みたい本があるから抜けるな。」
「私も今日は、外は凶と占いにあるので。」
神児さん、龍魔さん、優希さんと、それぞれが自分の意見を言って断る。
「・・・・・秋凪くんは!?」
可奈子さんが明らかに僕を睨んで言う。
「・・・・・お供します。」
「さっすがぁー。」
よかった。可奈子さんが笑顔を取り戻した。
「じゃあ、ちょっと夜まで秋凪くんとデートしてくるね。」
可奈子さんが笑顔でみんなに言う。今の言葉を街中でいわれたら、絶対に男の人に睨まれた事だろう・・・・・。可奈子さんはとてもモテるからなぁ。
僕は夜まで可奈子さんと遊ぶ事になった。
僕は何気なく時計を見る。時計の針がいつの間にか午後6時を指していた。
「あの、そろそろ戻りませんか?」
「ん?そうだね、そろそろ戻るかなぁ。」
可奈子さんも時計を見て、僕の言葉に頷いた。
僕と可奈子さんは自分たちの泊まっているコテージに向かって歩き始めた。
「秋凪くんって、やっぱ可愛いよねぇ。絶対に将来、いい御嫁さんになるよ。」
「僕は男ですよ!」
僕と可奈子さんは、そんな他愛のない話をしていた。
「キャー!!!誰か、誰か来てぇー!!」
その時だった、確かに僕の耳に女性の悲鳴が聞こえた。
その悲鳴は、僕たちの泊まっているキャンプ場の方からだった。
「もしかして、幽霊でも出たかな?」
「どうでしょう?」
「行ってみよう。よし、秋凪くんついてきなさい。」
可奈子さんはそういうと、ダッシュで悲鳴が聞こえた方へ行く。僕はそれにとりあえず着いていくことにした。
「・・・・・火事?」
悲鳴の聞こえた場所へたどり着くと、可奈子さんが一軒のコテージを見ながら言った。
そのコテージは真っ赤な炎に包まれて豪快に燃えていた。
その炎は、天の最果てを目指すように天高くまで昇っていて、凄まじいものだった。
「なんで燃えてるの?どうして?」
僕は、一人の女性が燃え盛るコテージを呆然と見詰めて、一人呟いているのを見つけた。
「あの、ここに宿泊していた方ですか?火の元の処理でも忘れたんですか?」
僕は何気なくその女性に聞いた。
「馬鹿言わないでよ!火の元なんて一つもなかったわよ!あのコテージにはライターどころかマッチ一本なかったわ!」
女性は僕の質問に怒鳴るように答えた。
「それじゃあ、どうして火事になんか?」
「知らないわよ!火がつく原因になりそうなものなんて何一つなかったはずなのよ!」
僕は、その時頭によぎってしまった・・・・・・。ここの伝説『火の神に呪われた場所』。
「秋凪くん。とにかく火を消さないと!」
僕は、可奈子さんの声で我に返り、いそいで水を用意し始めた。
「私は神児や龍魔を呼びに行くね。」
「お願いします。」
可奈子さんは僕の返事を聞く前に、走り去っていった。
僕と可奈子さんが火事を見つけてから、3時間くらい経過していた。僕たちの消火作業もあまり意味をなさず、女性が泊まっていたコテージは完全に燃え尽きてしまった。それでも火は消えて、とりあえずは安心といったところです。
「火の神は突然その力を人間に見せつけ、一度力を見せると、その力を見たもの全てを焼き尽くすまで炎を生み出す。」
突然、後ろからそんな言葉が聞こえてきた。その声の主は僕の知らない男性だった。
「どうも、始めまして。俺はこのキャンプ場に泊まっているジャーナリストの前田といいます。以後、よろしく。」
前田さんという方が、そういいながら名詞を差し出してきた。
「さきほどの火は、火事だったんですね。急いで走ってきたのに間に合わなかったようだ。ちなみに俺は、探偵をしている安藤といいます。どうぞよろしく。」
安藤さんも名詞を渡してきた。
その後も松橋さん、結構綺麗な女性です。高橋さん、とても体格のいい男性です。が集まってきました。
「これでこのキャンプ場に泊まってる人は全員ですね。」
安藤さんが唐突に言った。
「えっ?どうしてそんな事がわかるんですか?」
僕は当然の疑問と思われることを言った。
「さっき消防署に電話しようと思って携帯を見たら、携帯は圏外だしキャンプ場の電話は全て壊されていた。しかも土砂崩れで道は塞がれ帰ることもできない。」
「どういうことですか?」
「つまり、そんな偶然が重なる事はありえない。だからこの火事も誰かの仕業と考え、ここに泊まっている人が何人いるか調べさせてもらった。」
安藤さんが淡々と述べた。
「ぇえー!うそ・・・帰れないの?」
可奈子さんが明らかにショックそうな声をだす。
「火の神の呪いだよ・・・・もう俺たちは終わりだ。」
松橋さんがブツブツと呟いた。
「とりあえず、今日のところは俺のコテージに集まっててもらいますよ。」
安藤さんがみんなを睨みながら言う。
「なんであんたのコテージに行かなきゃならないのよ!」
火事にあったコテージに泊まっていた女性、藤崎さんが叫ぶ。
「貴方たちの中に犯人がいるかもしれないからですよ。」
安藤さんが冷静に答えた。その言葉に全員が驚きの顔をしていた。いや、神児さんは素晴しい寝顔をしていて、龍魔さんは漫画を読んで最高の笑い声をあげていて、他の人が驚いていた。ちなみに優希さんは星を見ていた。
僕たちは安藤さんのコテージに集まっていた。みんな、とても重苦しい空気を出していて僕には耐えられない。神児さんは寝ているし、龍魔さんは漫画読んでるし、可奈子さんはテレビ見て笑ってるし、優希さんは星を見ているし、・・・・・・・この人たちって何者なんでしょう・・・・。
「子供はいいねぇ、こんな時に好き勝手できて。」
高橋さんが嫌味ったらしく言う。
「なんですか?」
なんと、いつもは嫌になるくらい適当でダラダラしている人たちが全員、真面目に高橋さんを睨んでいる・・・・。ちなみに僕はもちろん睨んでいない。
「なに?子ども扱いされたのがそんなに気に障った?」
高橋さんがまた、嫌味っぽく言う。まったく勘弁してください。この人たち、特に神児さんを刺激しないでください。何をしだすか・・・・。
「いや別に。子供は素晴しいよ。なんたってトイジャラスはずっと子供でいたいらしいからね。なかなかに優れた思想だ。」
はい?さっきの凄まじい睨みはなんだったんですか?トイジャラス?意味がわかりません。神児さん・・・さっきは何に睨んだの?他のみなさんも、またダラケだしてるし・・・。
「まぁ、さきにみなさんの事を知りたいんですが、よろしいでしょうか?」
安藤さんがメモ帳らしきものを取り出して言う。どうやら事情聴取みたいなものらしい。
「ここで断ったら犯人扱いだろ?好きにしてくれ。」
高橋さんが微笑して言った。僕はどうも高橋さんが苦手です。
事情聴取は順調に行なわれて、順調に終わった。僕の感覚では収穫はゼロです。まぁ安藤さんも個人情報程度しか聞かなかったですからね。
まず、前田啓二(まえだけいじ)さんはジャーナリストで28歳。ここには今日きたみたいです。次に、松橋江美(まつはしえみ)さんは作曲家で26歳。ここには2日前に来たみたいです。次は、高橋拓(たかはしたく)さんは大学生で20歳だそうです。ここには3日前からいるとか。次に、藤崎灯(ふじさきあかり)さんはフリーターで20歳。ここには昨日きたそうです。そして、安藤大介(あんどうだいすけ)さん。探偵で32歳。ここには今日来たそうです。つまり、みんなバラバラですね・・・・。そして、今日火事があった時間6時頃はみんなバラバラで誰もアリバイがないとか・・・。
「何もわかりませんでしたね。」
僕は安藤さんに話しかけた。
「まぁ、これからだよ。」
安藤さんはそういって考え込んでしまった。
誰もがどこかで不安や恐怖があるのか、次第にみんな黙り込んでいってしまい、部屋は静まり返って時計の音だけが聞こえていた。
僕は、その静けさで耳鳴りさえ感じられていたくらいです。
カチ カチ パチ カチ パチパチ
気のせいだろうか、時計の音の他に妙な音が・・・聞こえる。
僕が、みんなに聞こうとした瞬間だった。
「おい!火だ!燃えてるぞ!」
前田さんが、音のしていた隣の部屋のドアを開いて叫んだ。
その火の勢いは凄まじかった。前田さんが気づいて叫んでいる間に僕たちのいた部屋も火の海になっていた。
「何してんだ!早く逃げるぞ!」
龍魔さんがみんなを促す。僕もとりあえず急いで逃げる事にした。
僕たちが逃げ出してすぐ、安藤さんのコテージは焼け崩れた。そして、また天の最果てを目指すように大きく燃え上がり、そして完全に燃え尽きて火は消えた。その火の勢いは、僕に、いや、ここにいる全員に神の業火を思わせた。
「・・・・いったいどこから火が・・・。」
安藤さんが頭を抱えて言う。安藤さん、かなり混乱しているようだ。
「謎の自然発火。そういうしかないだろ。」
前田さんが呟いた。
「自然発火?どういうこと?」
藤崎さんが前田さんの言葉に聞き返した。
「何も珍しいことじゃない。何度か聞いた事あるだろ。謎の自然発火現象。歴史にもいくつか残されている、謎の事件だ。例えば、シシリア島の小さな町でも自然発火の事件があったらしい。冷蔵庫や家具などが自然発火し、大きな被害を与えている。何軒にも延焼したケースもあり、警察が住民約40人を避難させた。
「人々がパニックを起こしそうだ。多くの人が自宅から避難させられている」と町役場の職員。火災の原因究明に当たっているが、今のところ何もわからない
最初の事件の後、電力会社は町への送電を中止してみたが、その後も火災が続発している。専門家にも解明の糸口がつかめない状況のため、放火や過電流、さらには超常現象との説まで飛び交っている。
「同じような出来事を見たことがある」と語るのはガブリエル・アモルト。彼はカトリックのエクソシト、悪魔祓い師だ。「悪魔が家につき、電気製品に働きかけるのだ...悪魔とその一味は強大な力を持っている。それを忘れてはならない。」といった事件など他にもさまざまな謎の自然発火事件が起きている。」
前田さんが淡々と話をしている。僕も謎の自然発火事件は聞いた事がある。今回もそのケースなのかなぁ・・・。
「・・・・自然発火現象か・・・・まさか本当に火の神の呪い・・・。」
安藤さんまで、そんな事を言い出した。
「謎の自然発火だと・・・まさか・・・。」
龍魔さんまで何を言い出すんですか・・・。でも・・・そうとでも言わないと説明がつかないです、今回の事件は。
「馬鹿ばっかなのか?ここにいるのは。笑わせるな、前田だかの話した事件も今回の事件も解明をしようともせずに謎だの神の呪いだの言いやがって。」
「珍しく神児の興味を引いたみたい。」
「・・・神児は珍しく本気だ。」
可奈子さんと龍魔さんが意味不明なことを言っている。
「あの、どういう事ですか?」
僕は可奈子さんと龍魔さんに聞く。
「そういや、秋凪くんは初めてだっけ?神児はやる気になるとすごいよぉ。」
「久々に神児が動くみたいだ。まぁ自分の目の前で自然発火が起きたんだ、やる気にもなるか。」
「・・・とにかく神児さんが本気なんですね。」
「まぁ本気にはならんだろうが、やる気はあるみたいだ。」
神児さんがやる気ねぇ・・・信じられないけど、本当に凄そうだ。
「神は呪うなどという遊びはしない。神は常に善悪の見定めのみを司り万物に天罰をあたえるのみ。今回の事件は天罰には程遠い。そして呪いというには正確性に欠ける。つまりこれは、呪いでも神の力でもない。」
優希さんがまた意味不明なことを口走っている・・・。でも優希さんの言うことってどこか知的なんだよね・・・。
「優希は本当にいいこと言うね。ちょっと回りくどいけど。」
神児さんが笑いながら言う。僕には二人の会話が理解できなかったりする。
「何が言いたいんだ。お前たちは。邪魔をするな。」
前田さんと安藤さんが神児さんと優希さんに叫ぶ。
「邪魔なのはお前らだ。」
笑顔で神児さんが言う。・・・その笑顔はなに?怖いですよ・・・。
「何が言いたい!」
安藤さんがまた叫んだ。
「つまり、なんの知識もない奴がでしゃばるなってことだ。何が謎の自然発火だ。自然発火なんかちょっと知識があればいくらでも起こせる。
例えばだ、ガソリンや灯油のような炭化水素を、密閉して空気と混合して、温度を上昇させると、火花プラグや種火などの着火源がなくても、自然に火がついて、燃えるんだ。着火源なしで、自然に火がつく現象を自然発火と呼ぶ。はたからみると、火がつくまでは何も反応が起こらず、いきなり火がついて爆発的な燃焼反応が起こっているように見える。しかし、実際は火がつく前の段階、これを前着火段階と呼ぶ、で化学反応が起こり、その結果、爆発的な反応が起こって火がつくんだよ。前着火段階で起こる反応は、ラジカル連鎖反応と呼ばれる反応で、このラジカル連鎖反応で、フリーラジカルが増加し、爆発的な反応に至ることにより自然発火が起こるんだ。他にも、硫化リンを密封された室内に置き、静電気でも摩擦でもいいから一瞬でも93℃以上の熱をあたえれば発火する。はたからみると自然発火だ。石灰に水を与えるという方法もある。つまり、少し頭を捻ればいくらでも自然発火の方法はあるってことだ。まだ迷宮入りは早いんじゃないか?」
「神児さん・・・すごい。」
僕は神児さんを誤解してました。神児さんって本当に頭がよかったんですね。僕は初めて神児さんを尊敬しました。
「今回の事件は人為的な犯行の可能性が高い。理由は明らかに人がいるところを狙っている殺人目的っぽいこと。もう一つは、ニトロセルロースだ。」
「ニトロセルロース?何それ。」
僕は神児さんの言葉に聞き返した。
「ニトロセルロースとはセルロースのエステル化の程度によって用途も異なり、エステル化の程度は試料中の窒素量、%によって示し、これを硝化度という。硝化度約12%以上のものは綿火薬として用い、11.5%程度のものはフィルム・塗料などの原料になる。11%程度のものはピンポン玉に代表されるセルロイド製品に用いられる。乾燥状態ではきわめて燃えやすいが、水分を含むと爆発性がなくなるので運搬や貯蔵の際には20%以上の水分を含ませておくのが普通だ。手品師が手の中から炎を出すマジックはこのニトロセルロースを使用している。一瞬で燃焼するので熱くなく、火傷もしないんだ。そして、ニトロセルロースは酸を混ぜることによって自然発火する危険性がある。」
「それが何か?」
神児さんの言いたい事が理解できない・・・・。
「さっきの自然発火でセルロイド製品を4つも見つけた。」
「えっ!?神児さん、どういうこと・・・。」
「さっきの藤崎だかのコテージの火事がすこし不自然なほど火の勢いがよかったから、もしかしたらと思ってメンドクサかったがセルロイド製品に水分を含ませておいた。それなのに爆発速度7300m/sec、密度1.20とニトロセルロイドととても似た特徴で爆発的な火が上がった。俺には誰かが仕組んだとしか思えないな。」
神児さん、すごーーーーーい。感動です。でも・・・メンドクサカッタという言葉が聞こえたのは・・・この際見逃しましょう・・・・。
「・・・・お前は何者だ?」
安藤さんが神児さんに聞いた。
「ふっふっふ・・・。この白雲神児は、IQ243、ちなみに先週、神児を騙して測ったの大天才だぁー!」
「なんで可奈子さんが勝ち誇ったように言うの?」
可奈子さんはいつもそんな感じだからもうなれたけどね。
「IQ243の白雲神児!?」
・・・なんかみんな前から知ってたふうな驚き方だぞ。
「あの白雲神児か!?」
「神児さんって有名人なんですか?」
「ん?・・・・・・ぁあ、確か8歳くらいの時に小遣い稼ぎと暇つぶしにテレビにでたっけ?すぐ飽きてやめちゃったけど。」
なんですかそれぇー。神児さんて、そこまで凄い人だったんですか・・・・。
「あっ・・・・俺犯人わかったかも・・・・。」
神児さん・・・・どこまで人間離れしてるんですか。しかも、犯人がわかったのにそんな適当くさい・・・。もしかしてもう厭きはじめたとか・・・。