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    長編小説

~神の異名~

夜を迎えて時刻は2時の20分前。
紫呉、浩介、和真の3人はようやく準備を終えていた。
「いいか。今回のこの結界は俺たち素人が作った子供騙しだ。1分も持つと思うなよ。今回の作戦はこの結界が破られてからが本番だ。もう何日も経つ、敵の魔術が完成していてもおかしくない今の状況下で俺たちに出来る対処法は限られてくる。今回の作戦の意味はいくつかあるんだ。その意味の一つ目は、相手の魔術がどれだけ完成しているかを見極めること。二つ目は、俺たちの力がどれだけ敵に通用するかを見極める。そして三つ目は、あわよくば敵を倒す。」
紫呉が淡々と作戦の説明をする。
浩介、和真はその説明をなんとか聞き頷いた。
「それで、今回俺たちがやることはいたって簡単だ。まずとりあえずは結界を壊されないようにする。
だが気張る事はない。もともと俺たちの結界が通用するはずがないからな。この結界はすぐ壊されても構わない、つまり結界はカモフラージュだ。壊されないようにする演技をすると考えてくれて構わない。
そして、結界を壊されてからが本番だ。まず和真は獣の気配がするところ全てにこの御札を投げる。」
紫呉は説明をしながら和真に御札を渡した。
「この御札を投げるだけでいいのか?」
和真は不思議に思ったのか紫呉に聞いた。
「ああ、御札を投げるだけで構わない。」
紫呉はすぐに答えた。そして話の続きを始めた。
「次に和真が御札を投げ終わったのを見てすぐに浩介が手で印を結ぶ。印の結び方はここに書いてある。失敗は許されない。今のうちに覚えておけ。」
そう言って紫呉は浩介に印の書かれた紙を渡した。
「そして最後に俺が呪を唱える。これで今回の作戦は完成だ。上手くいけばとりあえず魔術は破壊できる。」
紫呉が意見を言い終えた。
そのとたんに窓が鳴りだした。
前と同じで誰かに叩かれている音だ。しかし今回は音はすぐにやみそしてすかさず部屋中に獣の匂いと気配が充満した。
「落ち着け、まだ結界は破られてない。まず結界が壊されないようにしろ。」
紫呉が浩介と和真に叫んだ。
浩介と和真は頷いて結界の守りをする。
獣の気配と匂いはするもののまったく違和感はない。まだ三人のいる部屋は和真の部屋のままなのだ。
「・・・・結界が破られる。作戦の準備をしろ。」
紫呉が浩介と和真に言う。
浩介と和真は軽く頷いて準備を始めた。
そして結界は破られた。破られてすぐだった、前と同じ和真の部屋で和真の部屋じゃない違和感。
そう、結界が破られた時点で和真の部屋はこの世ではなくなっているのだ。人間の知らない未知の世界なのだ。
「和真、早く御札を投げろ!」
紫呉が和真に叫ぶ。
和真はそれを聞いたと同時に御札を投げすぐに気配のする場所全部に投げ終えた。
それを見たとほぼ同時に浩介は部屋の中心で紫呉に貰った紙に書いてあった印を結んだ。
その御札、印の作業が全て終わったのを見計らって紫呉が仕上げをする。
紫呉が呪を唱えるのだ。
「汝らあるべき主の元へと帰せよ。我、汝らへの呪を撃ち全てを終わりへと導く。ヴェ・オォ-・ゲトゥラァ・ゼェ・トゥ・オーラス・ヴェ・ゲトゥ・・・・・。」
紫呉が意味不明な言葉を続けた。
浩介と和真はわけがわからないまま紫呉の行動をただ見ていた。すると気づいた時には徐々に獣の気配と匂いは薄れていっていた。
紫呉の作戦は見事に敵に通じたのだ。浩介と和真は感心するしかなかった。
獣の気配と匂いは共に既にまったく感じなくなっていた。全て消滅してしまったのだ。
「・・・・終わった、たぶん敵の魔術は完全に壊せただろう。」
紫呉が一呼吸おいて言った。
「さすが神の異名をもつ者だね。」
和真が感心して言った。
「あいてが魔術師でも神の異名には叶わないわけだ。」
浩介もすっかり感心して言った。
しかし紫呉は顔色一つ変えずに浩介と和真を睨んだ。
「どうしたの?」
和真と浩介はどうぜん聞いた。
「まだこの戦いは終わってない。犯人が割り出せていない時点でまた浩介に魔術を掛けてくる可能性は高い。前も言ったと思うが犯人と浩介を狙った動機そして魔術の種類がわからない限り何度でも浩介は狙われる。それもさらに魔術を強化されてだ。」
紫呉が淡々と言う。
「・・・犯人なんてわかるのか?」
和真が紫呉に聞いた。
「だいたいの予想は付く。犯人は浩介の知り合いで近くにいる人物。そして魔術に詳しく浩介が犬神憑きと知っている人物だ。そして浩介の机の中に紙を入れられた人物という事になる。いや、正確には浩介の机の中に紙を入れても不信に思われない人物だ。」
紫呉は淡々と言いながらも犯人の検討が付いている様子だった。
「で・・・犯人はだれなのさ。」
浩介が紫呉に言った。
「・・・・今はまだ言えない。十分な証拠もないのに推測の中の犯人の名前を出すわけにはいかない。」
紫呉はそういって考え込んでしまった。
そのままその日の夜は終わりを迎えた。



朝方早くに紫呉と和真は起きていた。別に眠れなかったわけではない。調べごとをするためだった。
そして、その調べごとを早めに済ませると浩介を起こした。
浩介が完全に目を覚ますのをまって紫呉は浩介に一言告げた。
「犯人がわかった。」
紫呉の一言に浩介は目を丸くした。
そしはあまりにも唐突だったからだ。犯人がついに判明したのだ。しかし、浩介には喜びと不安がまざった妙な感情があった。
そう、浩介の中には犯人をしることへの不安があったのだ。
なぜかと言うと犯人がもし自分の親友だったり家族だったりしたらという考えが浩介にはあったからだ。
その不安は紫呉のつぎの一言で確信した。
「犯人は浩介のよく知る人物だった。」
紫呉は単調にそう述べた。
和真は少し物悪そうに下を見ながら頷いた。
「え・・・俺のよく知る人物・・・?」
浩介は聞き返した。
「ああ。それもいつも身近にいる人物だ。」
紫呉が答える。
「今回の怪現象の犯人は・・・・お前の父親だ。」
紫呉が一息おいて言った。
浩介はただ固まるしかなかった言う言葉を見つからない様子だった。
「だって・・・クラスのだれかじゃ・・・。」
浩介にとってクラスのだれかが犯人だった時の数百倍のショックだったのだろう。顔色は明らかに真っ青になっていた。
「だって・・・動機がないじゃないか。」
浩介は必死に考えてそう言った。
「動機はこれから犯人に直接聞きにいく。」
紫呉が答える。
「動機もはっきりしてないのに父親が犯人だなんて推測だけでものを言うなといってるのはいつも紫呉だろ。」
浩介は紫呉に怒鳴り気味で言った。
「これは推測じゃない真実だ。これから浩介の父親にあって話せばすぐにわかる。俺は推測から抜けていない物事は確かに言うなといった。しかし推測が真実に変わったときに物事いわないのは時と場合によるがやってはならない行為だと思っている。」
紫呉が淡々と答える。
浩介は完全に黙り込んでしまった。
紫呉と和真は浩介が少しでも落ち着くのをまってから浩介の父親に会いに行く事にした。
そして、浩介が落ち着いたと判断して三人は浩介の父親に会いに行った。


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